番組プロデューサーだったりします。
毎週1本は書評というか、なんか書く!と宣言してみます。
出来のほどは保障できませんが。(苦笑)
で、とりあえず一つ目。
「渋滞学」 / 西成活裕 (ISBN978-4-10-603570-8 新潮選書)
人混み、インターネット、アリ、航空機、自動車、などなど……
このリスト、それぞれ関連なさそうだけど共通するキーワードがあります。
それは、渋滞。
「交通渋滞でバス遅れまくり」なんてのは福岡の人だと、結構実体験あるんじゃない? あと、首都圏だと朝夕の通勤ラッシュ帯は「電車がつかえちゃって遅れる」なんてのも。 なんで、渋滞するんだろう?という疑問。それを掘り下げていくといろんな現象に共通点が見つかってくると言うのが、なかなか面白いです。
ひどい渋滞に巻き込まれてしまったときに「先頭は何をノロノロしてるんだ!」って、だいたいみんな一度は考えたことあるんじゃないでしょうか?
もちろん、事故が発生してそこを先頭に大渋滞、なんていうのはよくあることですが、そうでなくても、いわゆる自然渋滞というのもあって、高速道路とかでよくあるのが、実際は登りなんだけどものすごく緩やかで気がつかないところ、いわゆるサグといわれるところ。気付かない程度の登り坂だからドライバはアクセルを踏み込むこともなく、けど登りりだから実際は車のスピードは落ちていって、次第に後続車との距離が詰まっていって渋滞の原因になる、というからくり。
ようするに、車間距離が縮まると渋滞につながるわけで、それを回避できれば渋滞も回避できる、ということになります。
で、交通渋滞の応用を考えてみるんですが、渋滞を数学的なモデルにしてしまうといろいろとコンピュータでシミュレーションできて都合がいいのです。
そこで、役に立つのがASEP(エイセップ)というモデル。箱をずらっと一列に並べて、幾つかの箱には球を入れておき、次に一斉に球を右隣に移すのだけど、右隣の箱に球が入っていたら動かせない。こんな簡単なルールのモデルでも、渋滞を理解するのには強力なモデルになるんですね。
ざっとイメージすると、球の列が右にちょっとづつ動いていく感じになります。球を車に見立てると道路を走る車のようにも見えるし、通路を歩く人の列やら、えさを運ぶアリの列のようにも見えてくる。で、実際に絵を描くとよく分かりますが、球の数が少ない場合は、しばらくすると球の入った箱と空の箱が交互に並ぶ状態になります。ここで問題になるのは、箱の数に対する球の数の割合。車で言えば車間距離。
このモデルとその派生の手法(セルオートマトン法といわれる)を使って、人の集団やら、アリの行列やら、はたまたインターネット上のパケットの流れやら、いろいろ分析できるんですね。
で、いろいろ研究しているうちに渋滞したほうがいいものもあると。
たとえば森林火災は、火の進み方をモデル化すれば、その進み方を渋滞させればよいことになります。あと、アリの行列の場合は、地面につけたにおい揮発性の物質が道しるべになっていて、あまり間隔が空きすぎるとにおい物質が消えてしまって、かえって効率が悪くなるわけです。
その他、この本で取り上げられる事例と言えば、避難時の群集の動き、駅構内の人の流れ
フルマラソンのペースメーカー、砂時計の砂に代表される粒々(粉粒体)の動き、電車の運行、エレベータの制御、航空機の空の渋滞、物流や生産ラインの渋滞、マネーフロー、生体内の血液の渋滞や、分子モーター、さらにはネットーワーク理論まで。
実は、渋滞学と言うのは、統計物理学や経済学、生物・医学といった分野にまでつながるかなり幅の広い応用分野の科学なんですね。そもそもASEPというモデルは、人体内のタンパク質合成の仕組みを研究する過程で生み出されたものなんです。ただ、ものすごく数学チックな内容のものを、生物学関係の雑誌に掲載したもので、最近まで顧みられることがなかったんだそうです。
渋滞一つとってみたところが、いろんなものと結びつく様子が「これでもか」と言うほどに出てくるこの本、物事を一方向だけから見るんじゃなくて、あっちこっちから眺めるといろいろ面白いことがわかるよ、と言う典型のような気がします。
お仕事でも、こんな視点を忘れてはいけませんねぇ。
コメント (1)
この本、面白そうだなぁ。
貸してください(^^;
投稿者: his | 2007年05月06日 07:54
日時: 2007年05月06日 07:54