赤を見る―感覚の進化と意識の存在理由
進化心理学者ニコラス・ハンフリーの講演会の話をもとにまとめられた最新刊。
進化心理学、というと、「?」な感じもするかもしんないけど、進化論の立場から心の性質を解き明かそうという学問のこと。簡単にいえば、心があることが進化上有利であったから心ができたんだ、という立場で考える、ということ。
最近、よくわかんないけど「脳」ブームなのか、脳トレだの、脳神経学だの、本やゲームや、いろいろでてますね。で、心とか意識とかの話になるとやっぱり歯切れが悪いのが多い気がします。もちろん、脳の機能なんてまだまだわかんないコトだらけだし、人工知能なんかもロボットとともに語られることは多いんだろけど、そもそも無理なんじゃないかという声もあるし。
そんな中で、進化論の立場から「意識ってどういうもの?」「意識があると、どうイイわけ?」というのを解き明かそうというかなり野心的なお話です。とはいえ、講演を元にまとめられているからか結構読みやすい。 本の題名どおり「赤を見る」というのはどういうことか?をテーマにお話が進められます。
で、赤色が見えている(=知覚する)というのと、見えている赤色を体験する、というのの違いを、盲視という特殊な事例を元に分析し、それをとっかかりに、最終的には意識というのはそれ自身が重要であるように作られているから重要なんだ、という。盲視というのは、脳の視覚野に損傷があると当然ながら視覚はダメージを受けるんだけど、一部の人々は感覚はないものの知覚している、ということが起こるのだそう。例えば、赤いスクリーンの前にそういう人がいるとして、本人は「なにも見えていない、赤い感覚はない」と思っているんだけど、そこが赤いということを報告できる、つまり知覚することはできている、らしい。つまり、目のような感覚器官を通じて知覚することと、たとえば赤い色を感じる感覚というのは別ものだよね、ということ。
で、ここからは進化論の視点で、太古の生命体が外部刺激を知覚する様をモニターすることで外界を把握するしくみを獲得していったのでは?という仮説にいたり、なんで意識ってあるの?というところまで説明してしまう。脳神経学の話でよく出てくる、ホムンクルスがどうした、とか、クオリアがどうとか、そういうのよりすっきり説明できてる気がするんで、結構あたってるんじゃないのかしらという気になります。
同じ著者の前著「喪失と獲得」は、この話のさわりも含めもっといろんなテーマが盛り込まれてて、刺激に満ちた本なので、これが面白いと思う人はそちらもおすすめです。
コメント (1)
一風変わった脳内構造のホームページがあるのですが、よろしければ、ご批評願えないでしょうか?
投稿者: ノース | 2007年07月03日 10:51
日時: 2007年07月03日 10:51