●おすすめCD
ミュージックサロン推薦のCDを、洋楽や邦楽、新作や再発盤を問わず、紹介するコーナーです。

ブラック・コーヒー/アル・クーパー
7月27日発売  【ソニー MHCP−793】

アルといえば、ボブ・ディランの名曲「ライク・ア・ローリング・ストーン」で印象的なオルガンを弾いていたことでも知られるロック界の伝説的アーティスト。本作はその彼のソロ名義としては30年ぶり(!)のアルバム。
確かにヴォーカルは、黒人のような太さやディープさには少々欠けるが、それを補ってあり余るほどに、ハッとさせられるようなブラックミュージックの消化、解釈の仕方や、R&Bやブルースへの愛着が溢れる内容なのだ。
これほどアルの音楽的背景を集約されているのだから、それはもう泣けてくるほどに…。もちろん彼のトレードマークのオルガン演奏も楽しめる。
しかも、歴史の生き証人でありながら、回顧的にならず、今を生きている感触もちゃんとある。渋さとは「過去を振り返っているものだ」と思い込んでいる人にこそ聴いてほしいと思う。

 

ホリアテロリズム/朝日美穂
12月18日発売   【朝日蓄音 ASCO9003】

実は人間、15分か20分くらい昼寝をしたほうが、午後の仕事の能率が上がるんだそうで、その寝る直前に緑茶を飲んでおけば、緑茶に含まれるカフェインはちょうど15〜20分後に効いてくるので、目覚めがよくなるらしい。
少し紹介するのが遅れたが、昨年12月に発売された朝日美穂という女性シンガーソングライターの約5年ぶりのフルアルバムは、その昼寝前の緑茶のような作品だ。このアルバムを聴いた後に、何か別の作業をして、それをやり終えたときに、なぜかいつもより、ほんの少しだけ充足感が増したと感じさせてくれるような…。
とにかく、よく出来た工芸品のようにメロディーや音作りに手間がかかっているのに、内側にこもった密室感をそれほど聴き手に与えない…いや、密室感と同時に外側へアピールするベクトルも持ち合わせている、と言ったほうが正確かもしれないが、昨今、そういう印象を与える作品に出会えることは、そう多くないので、その個性をぜひその耳で確かめてほしい。。

 

ゲット・アウェイ・フロム・ミー/ネリー・マッカイ
10月20日発売  ソニー・ミュージック・インターナショナル SICP−637〜8

久しぶりに心惹かれる女性シンガーソングライターの登場だ。ネリー・マッカイ。
ロンドン生まれ、ニューヨーク育ちの20歳。しかもデビュー盤なのに2枚組、全18曲。
これは女性としては史上初なのだそうだ。デビュー作から2枚組にするだけあって、とにかくサウンドのバリエーションが豊富。イントロがキャバレー調なのにレゲエになる曲や、マンドリンとともに哀愁たっぷりに始まって、サビでタンゴになる曲があったり、70年代ソウルっぽい曲、ジャズバラード、スウィング、60年代ガールズポップ、そしてラップまで様々な要素が盛り込まれている。だからといって、全曲メロディーと彼女のピアノが際立っているので、散漫な印象はない。大抵、音作りがバラエティーに富んでいるミュージシャンは、あまり真剣に評価されない傾向があるようだが、何かひとつのスタイルを突き詰めている人だけが誠実で、こういう人はただの器用貧乏だとでもいうんだろうか?たぶん、彼女は自分が表現したいことを「あんな風にも、こんな風にも言える」と常に考えてるから、多くの音楽的文法を使ってしまう体質なのだ、きっと。今年の女性アーティストの中では、最も注目すべきユニークな個性の持ち主だ。特に「最近、思考が硬直ぎみだなぁ」と感じる人は、ぜひ。

 

グッバイ・クルエル・ワールド/エルヴィス・コステロ&ジ・アトラクションズ
9月22日発売  ビクター VICP-62857〜8

アーティスト本人の思いと、世間の評価にはギャップがあることも多いもので・・・。84年発表のこのアルバムが、26曲入りボーナスディスク付きの2枚組として、再発売。メロディーが親しみやすく、ソウル色の濃い、コステロ流ポップ・ソウルといえる作品だが、コステロ本人があまり気に入ってないことでも知られている。どうやら、本人は「曲は悪くないが、もっと生々しい感触の音作りにすべきだった」と思っているらしい。ところが、世間では、このアルバムが好きなコステロ・ファンは多い。筆者もその一人で、このアルバムは80年代屈指のブルー・アイド・ソウル作品だと思っているくらいだ。そして当時より、現在聴いたほうが真価が分かるんじゃないか、とも・・・。だから、これを機会に90年代以降のコステロしか知らない人にも聴いてほしい。ホール&オーツやシンプリー・レッドが好きな人も、ぜひ。ちなみにダリル・ホールもゲスト参加しています。


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