2005年8月アーカイブ

8/28放送分 お母さんケアセンター

子育てに向かい風が吹いている世の中と言われています。
核家族化が進み、無条件に手助けをお願いできる人が側にいない。お父さんは、仕事が忙しくて、あまりあてにできない・・。理想通りにいかない子育てをひとりで抱え込み、悩んでいるお母さん、疲れているお母さんも少なくありません。子育てを支援するシステムは、子どもを預かってくれる「チャイルドケア」や「ファミリーサポート」などがありますが、お母さん自身をケアして支援してくれるところがあります。
宮崎市のある小児科。病院の敷地に、隣接して「お母さんケア」のスペースができました。小児科の女医さんが、子どもを連れてくるお母さんたちに、元気がなく疲れていることが心配になり、何か、お母さん自身をケアできることはないかと考えていました。そこへ、知り合いだった「おもちゃ病院の女性」、「絵本博物館の女性」、「ハーブ園の女性」、「化粧品を通してエステをする女性」が集まり、「お母さんケアセンター」ができました。
木をふんだんに使ったスペース・・・。子どもたちの為には、あたたかみのある木のおもちゃ、わくわくする絵本たち・・・。そして、お母さんの為には、アロマオイルを使った60分のエステ・・・。お母さんたちは、体を優しくマッサージしてもらいながら、子育ての悩みなどを自然に口にし、身も心も癒されて元気になって帰っていくそうです。エステを施す女性も子育て中。共感し、慰めるうちに、元気になっていくお母さんたちを見ていると、彼女自身も元気になるそうです。その間、子どものケアは、来ているお母さんたちが、自主的に協力してやっているそうです。
誰かを支える人。その支える人を、また誰かが支えて生きている・・。
今日もまたひとり、元気さを取り戻したお母さんが、子どもに笑顔で接していることでしょう・・・。

8/21放送分 飛行機に託す夢

夏休み、空港はたくさんの人達で賑わっています。
中には、飛行機に乗るのが生まれて初めてという、小さいお子さんの姿も見られます。
ある幼稚園の男の子が、家族と一緒に飛行機で旅行に行くことになりました。
男の子は、飛行機に乗るのが生まれて初めてです。
飛行機が空を飛ぶのは、見てはいたものの、その飛行機に自分が乗って実際に、空を飛ぶとなると、話は違います。男の子は怖くて怖くて、空港のロビーの真ん中で泣き叫んでいました。まわりには、たくさんの人がいます。・・・・。全く関係なく搭乗手続きを進める乗客や職員、見送りの人たち・・・、微笑ましく眺める人・・・。
家族も、「いやだ、いやだ」と泣いて暴れる男の子に手をやいていました。
そんな中、作業着を着たお兄さんが、その男の子に近づいて来て話しかけました。「大丈夫だよ。雲の上の空は、すばらしい所だよ。」と声をかけてくれました。
男の子は泣きやみ、家族と一緒に飛行機に乗ったそうです。
それから十数年。男の子は、飛行機に憧れを持ち、今、大好きな飛行機の側で働く夢を持ちながら、専門学校に進んで勉強をしています。あの日、あの時、声をかけてくれたお兄さんのことを想いながら・・・・。そして、その夢がかなったら、自分も小さな子どもに、やさしく声をかけてあげたいと思っているそうです。「大丈夫だよ。僕も、君と同じくらい小さい時、飛行機に乗るのが怖くて泣いていたんだよ。でも、その時、あるお兄さんに声をかけてもらい、勇気を出して乗ったら、飛行機が大好きになったんだよ。」と・・・・。
飛行機は、彼にとって、勇気と未来を載せた乗り物。
大空に向かってまっすぐ飛び立つ飛行機を見ていると、誰も知らない未来に向かって、夢を持ち、大きく羽ばたいている人の姿に見えてきました・・・。

8/14放送分 はるかのひまわり

夏の花の代表といえば、「ひまわり」。まるく大きく花開くひまわりは、太陽をイメージさせる花です。花びらの黄色は元気を与える色。空に向かって高く高く伸びる茎は、小さな子どもの背比べにもなっています。
今から10年前、阪神淡路大震災が起きた神戸に、今、たくさんのひまわりの花が咲いています。その数、およそ150万本・・・・。
このひまわりの花は、被災者たちが、震災の時にお世話になった全国・全世界の方々へ「感謝の気持ち」込めて1本1本植えた花。その背景には、「はるかのひまわり」のお話があります・・・・。
1995年1月17日。午前5時46分に起こった阪神淡路大震災・・・・。この地震で亡くなった方は、6433人・・・。
その中に、当時小学6年生の「はるかちゃん」がいました。その年の夏、彼女が亡くなった場所に、一輪の大きなひまわりが咲きました。それは、はるかちゃんが生前にかわいがっていた、隣の家の「オウムの餌」だったひまわりの種から咲いた花でした。その後、その場所にたくさんのひまわりが咲きました。地域の人たちは、その花の種を集め、「はるかのひまわり」と名付け、毎年絶えることなくひまわりを植え続けてきました。そして、いつのまにか、震災からの「復興」と感謝の想い、亡くなった方への「慰霊」の思いを込めて、「ひまわり」の花を植える輪が広まっていきました。
震災に遭った人たちは、この「はるかのひまわり」を植えることで、お互いの気持ちを共有し手を携え、前を向いて生きていこうという想いが沸いてきたそうです。
はるかちゃんの残した種が、心と心の握手で拡がり、今年も勇気と希望の大輪を咲かせ続けます・・・。

8/7放送分 高校野球の監督

「高校野球の監督」
夏の全国高校野球大会が始まり、甲子園球場で繰り広げられる熱戦に釘付けになります。この甲子園に来るまでにも様々なドラマがあったんだと思うと、さらに胸が熱くなります。
高校野球の監督には、名監督と言われる有名な人たちもいますが、私の中に刻まれているある一人の監督がいます。名前も知らないし、会ったこともない監督ですが、その監督に指導を受けた当時高校球児だった2人から、忘れられない監督の言葉を聞きました。
2人が監督に教わった心に残る言葉を、それぞれ教えてくれました。
ひとつは、「意地を出せ!」・・・。正しい日本語の使い方は、「意地を通す」。一度やろうと思ったことを、無理にでもやり通す。自分の信念を貫くという意味です。それを、あえて「意地を出せ!」という表現に・・・。
もうひとつは、「一所懸命」(いっしょ・けんめい)・・・。「ひとつの所に懸命になる」という言葉です。本来なら、ひとつに、生きると書いて「一生懸命」(いっしょうけんめい)といいますが、これもあえて、「一所懸命」と表現されて教えられてきたそうです。
「意地を出せ」にしろ「一所懸命」にしろ、気持ちの集中を感じる力強い言葉です。言霊といわれるように、言葉にも魂があり、声に出すと不思議な働きがある気がします。この言葉を2人の男性は、人生の勝負所で思い起こし、頑張ってきたそうです。
この2つの言葉の、産みの親は、長崎のある高校野球の監督・・。残念ながら、この監督は数年前に他界されたそうですが、その言葉は、今を生きる若者の胸にしっかり刻まれて活きています。
「一球入魂」。ひとつの球に魂を入れ込むという言葉のように、ここぞ!というところで、「一所懸命」になり、「意地を出す」・・・そんなドラマをくぐり抜けてきた熱い高校球児の試合を見ながら、会ったこともない、もうこの世にはいない、粋な監督のことを思いました。

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