匠の蔵~words of meister~の放送

恩納村漁業協同組合【海ぶどう養殖 沖縄】 匠:銘苅宗和さん
2015年05月09日(土)オンエア
象の鼻の景色で知られる沖縄県を代表する景勝地、万座毛の近くで海ぶどうを養殖する『恩納村漁業協同組合』の銘苅宗和さん。銘苅さんは以前まで県内の一部で天然採取されるだけだった海ぶどうを、陸上で養殖する技術を確立し、沖縄県の名産品に育て上げた立役者で、その海ぶどうは農林水産祭で天皇賞を受賞するなど、数々の栄誉に輝いているという。
「海ぶどうの養殖に取り組み始めたのは平成元年のことでした。当時は、もずくの養殖が盛んな時代で、その勉強の為に県の水産試験場を訪れたんですが、そこで試験的に海ぶどうの養殖が行なわれていたんですよ。長時間潜水して収穫しなければならないもずくの養殖は、組合の高齢者たちにはとても負担になっていたので、この海ぶどうの養殖は、それに代わる産業になるのではないかと閃いたんですよね。そこから研究を始めて、6年後に販売できるまで漕ぎ着けました」。もともと宮古島の名産品で、沖縄本島では当時、殆どその存在を知られていなかったという海ぶどう。銘苅さんは反対する周囲の雑音を遮り、一心不乱に海ぶどうの養殖技術を追求していったという。
「最初はもずく養殖で培った知識や技術を応用して、海の中で養殖を始めたんですが、台風などの天災の影響をもろに受けて安定して育てることができなかったんですよね。だったら陸上に移してみようと。そこが一番苦労した点なんですが、おかげで海ぶどうを育てる為には、塩分濃度、水温、太陽光、養分のバランスが一つでも欠けると、育つのが遅くなったり、場合によっては溶けてなくなったりするということが分かりました」。海ぶどうの養殖には新鮮な海水を常に循環させることが必要だが、大雨が降った時は山から大量の雨水や赤土が流れ込む為、現在は取水口を影響の受けにくい沖合600mまで伸ばしたという銘苅さん。そうして様々な技術を駆使して育てられた海ぶどうは、漁港にある巨大なハウスの中に設置された水槽の中で、たわわに実っていた。
「良質な海ぶどうを育てる為には、当然技術的な要素が大きくモノをいうんですが、最終的には、やはり人間の力が必要となるんですよ。その一番のポイントは、最低でも朝と晩に見て回るということなんです。環境さえ整えてあげれば放っておいても育つような代物ではありませんからね。本当に繊細な生き物で、崩れる時は1〜2時間で崩れますよ。それを戻すのには4〜5日程もかかりますからね。ですからやはり人間の目が大事なんです。栄養が採れているのか?塩分濃度は大丈夫なのか?水温は適性なのか?そのすべてを海ぶどうが教えてくれますからね。子どもの成長を見守るような感じですかね」。それは家族に注ぐ愛情と同じだと、海ぶどうにもたっぷりの愛情を注ぐ銘苅さん。そんな銘苅さんの優しさは、その海ぶどう一粒一粒にも、たっぷりと詰まっていた。
「やはり思いやりかな。思いやりがないと相手は応えてくれないから。それしかないですね」。座右の銘も『思いやり』だと語る、そんな銘苅さんが育てた海ぶどうは、以前、取材した沖縄料理店『元祖海ぶどう』で提供されているという。名物の『海ぶどう丼』で、そんな銘苅さんの思いやりの詰まった海ぶどうを味わって欲しい。

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