匠の蔵~words of meister~の放送

迫醸造店(出光醤油)【老舗醸造店 鹿児島】 匠:迫勝男さん
2010年02月13日(土)オンエア
九州で最も長い歴史を持つソースや、各品評会で金賞を受賞した醸造酢など、醤油以外の商品の製造でも知られる「迫醸造店(出光醤油)」の工場長・迫勝男さん。昭和3年に鹿児島市天文館で産声をあげた「迫醸造店」の商品は、大量生産が出来ない為、創業以来70有余年、一般の商店では殆ど販売されていないそうだが、天文館の殆どの飲食店が使用するなど、その味は多くのプロたちからも愛されている。「迫醸造店の商品は、厳選された素材と伝統製法で丁寧に時間をかけて作り上げていますので、限られたルートでしか販売が行えないんですよね。一見、頑固にも時代遅れにも見えるかも知れませんが、伝統製法と、それを変えない事にこだわることで、創業以来、大量生産された市販の商品とは比較にならない旨味を守り続けることができたと思います」。そんな「迫醸造店」の調味料の特徴は、旨味と切れ味にあると言う。「醤油に、お刺身をつけて食べる時、いつまでの醤油の味が残るのか、スパっと切れて次の刺身を食べたくなるのか、そこが一番大事だと思っています。その為には、後味の切れる素材を多く加え、後味が長引く素材を少なくしないといけません」。どの醸造店でも、その割合を常に研究し、店の個性とも言える、それぞれの味の特徴を生み出している。しかし、本当に旨い調味料を生み出す為には、もちろん日々の努力も必要となる。「特に酢を作る菌などは、毎週のように目で見て、そして温度計で温度を計って、現状を確認しなければなりません。菌は目で見える訳ではありませんが、表面の皮膜と温度で、状態を知ることが出来ますからね。少し温度が上がっていると思えば、少し隙間を作り温度を逃がすなど、菌をコントロールすることが大事ですよね」。そうして出来上がった迫醸造店の調味料は、決して味がブレることがない。「社長からは、いつも味見をしろと言われています。毎日、醤油に酢にソースを舐めて味を確認する。その為には、何とかは風邪を引かないと言われるくらい、体調管理には力を入れています。ですから今では舐めるだけで、調味料の名前を当てることが出来るようになりました」。そんな調味料のソムリエとも言える迫さんは、さらに、調味料にも旬があると言う興味深いことを言う。「一年の中で、寒い冬の間に作られている調味料が、一番出来がいいと思います。特に酢は、冬がいいですよね。夏場の暑い時に作った酢は、いわゆる酸度と言うのですが、酢の勢いが弱いんです。もちろん、お客さんのとこに行く時に酸度調整をしていますから、皆さんには分からないと思いますけどね」。旬があるのは何も魚や野菜だけではない。それは調味料にもある。迫さんは、その旬、勢いをコントロールして最も良いモノに調整している。「旬を見極める、見分ける目は、やはり経験が一番モノを言うと思います。受継がれてきた経験も含めて、老舗として私たちは自信を持って、商品を送り出しています」。鹿児島の食文化を支え、出光(デコー)の愛称で親しまれている「迫醸造店」の調味料たち。それは今や薩摩の郷土料理には欠かせない隠し味となっている。

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