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糖・脂質代謝改善効果をもつ乳酸菌OLL2712株が免疫細胞から抗炎症性物質を産生させるメカニズムを明らかに
株式会社 明治
糖・脂質代謝改善効果をもつ明治保有の乳酸菌 「Lactiplantibacillus plantarum OLL2712」が 免疫細胞から抗炎症性物質を産生させるメカニズムを明らかに 日本乳酸菌学会2025年度大会にて発表
明治ホールディングス株式会社(代表取締役社長 CEO:松田 克也)と株式会社 明治(代表取締役社長:八尾 文二郎)は、大阪大学 微生物病研究所 山崎 晶教授および京都大学 大学院農学研究科 岸野 重信准教授、小川 順教授らとの共同研究で、乳酸菌「Lactiplantibacillus plantarum(ラクチプランチバチルス・プランタラム)OLL2712」(以下、OLL2712株)による、樹状細胞株※1からの抗炎症性物質・インターロイキン-10(IL-10)の産生誘導機序を明らかにしました。本研究成果は2025年7月4日~6日に開催された日本乳酸菌学会2025年度大会にて発表しました。なお、同成果は2025年2月4日に国際学術誌の「Microbiology Spectrum」にも掲載されています。
(参考URL: https://journals.asm.org/doi/10.1128/spectrum.01196-24)
※1 樹状細胞とは、外来異物等の情報を他の免疫細胞に伝えて適切な免疫応答を誘導する白血球の一種です。
【研究成果の概要】
樹状細胞には外来異物を感知できるさまざまなセンサー(受容体)があり、樹状細胞はOLL2712株をそのセンサーで認識することによりIL-10を産生します。本研究から以下の詳細が明らかになりました。
①IL-10産生にはTLR2※2とMincle※3の2つの受容体が関与する。
➁Mincle自体もOLL2712株がTLR2に認識されることにより発現誘導される。
③Mincleは細胞内に取り込まれたOLL2712株を認識し、IL-10を産生誘導する。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202507142112-O4-e02643iF】
図 OLL2712株の樹状細胞におけるIL-10産生誘導機序
※2,3 細菌などがもつ特定の構造を認識する受容体の一種。TLR2とMincleは異なる物質を認識します。
【研究成果の活用】
OLL2712株の優れた特性について、科学的な視点から明らかにすることで、商品への信用・信頼を一層確かなものにしていきます。また、本研究で関与が明らかとなった受容体がOLL2712株のどの成分を認識するのか、引き続き検討を進めるとともに、得られた知見を活かしてより効果的に健康維持に役立つ商品づくりに活用してまいります。
【研究の目的】
OLL2712株は免疫細胞から抗炎症性物質であるインターロイキン-10(IL-10)の産生誘導活性を指標に、明治が保有する6,000株以上の乳酸菌ライブラリーの中から選抜された乳酸菌です※4。これまでに、OLL2712株を配合したヨーグルトには慢性炎症を抑制することで糖・脂質代謝を改善する効果があることが確認されています※5-7。そのため、この機能には本株のIL-10産生誘導活性が重要であると考えられますが、その産生誘導機序は不明でした。本研究ではOLL2712株が示す健康増進効果の根拠をより科学的に明らかにするために、樹状細胞からのIL-10産生誘導機序を解明することを目的としました。
※4 出典:Toshimitsu et al., J Dairy Sci, 99(2):933-946, 2016
※5 出典:Toshimitsu et al., Nutrients, 12(2):374, 2020
※6 出典:Toshimitsu et al., Curr Dev Nutr, 5(2):nzab006, 2021
※7 出典:Toshimitsu et al., Diabetes Obes Metab, 26(6): 2239-2247, 2024
発表内容
【タイトル】
Lactiplantibacillus plantarum OLL2712によるIL-10産生にはTLR2とMincleの協調的な活性化が重要である
【方法】
株化樹状細胞※8をOLL2712株や受容体リガンド※9で刺激しIL-10産生への影響を検討しました。また、抗体を用いた阻害試験、Mincle遺伝子発現の抑制、細胞内への取り込み阻害試験を行うことで、これらの分子や現象がIL-10産生へおよぼす影響を検討しました。
※8 試験管で長期間培養可能な樹状細胞
※9 特定受容体に働きかける低分子化合物
【結果】
・TLR2阻害抗体によりIL-10産生は減少しましたが(図1A)、TLR2リガンドのみではIL-10が産生されないことから(図1B)、TLR2を介した刺激はIL-10産生に必要だが十分ではないと考えられました。
・Mincleの遺伝子発現を抑制するとIL-10産生量が減少することから、MincleがOLL2712株の認識に関わること (図1C)、そしてTLR2とMincleの共刺激はIL-10産生を促進することが明らかになりました(図1D)。
・TLR2刺激がMincleの発現誘導を促すことから(図2A)、OLL2712株はTLR2→Mincleの順に認識される可能性が示唆されました。
・ Mincle阻害抗体を用いて細胞表面上に存在するMincleの働きを抑えましたが、IL-10産生 量に変化はありませんでした(図2B)。一方で、OLL2712株の樹状細胞内への取り込みを抑制するとIL-10産生が減少することから(図2C)、Mincleは細胞内に取り込まれたOLL2712株を認識し、IL-10産生を誘導する可能性が考えられました。
【画像】
図1 TLR2とMincle はOLL2712株によるIL-10産生誘導に関与する。(A)TLR2阻害抗体処理によりIL-10産生量は減少した。(B)TLR2リガンド刺激のみではIL-10は産生されなかった。(C)Mincle遺伝子発現抑制によりIL-10産生量は減少した。(D)TLR2とMincleリガンドは協調的にIL-10産生を促した(a-c異符号間に有意差あり、n.d. 検出限界値以下)。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202507142112-O8-C3X01ifd】
図2 MincleがOLL2712株認識にいたるメカニズム。(A)MincleはTLR2刺激によって誘導された。(B)Mincle阻害抗体を用いた試験においてIL-10産生に変化がないため、細胞膜に発現するMincleはIL-10産生に関与しないことが示された。(C) OLL2712株の樹状細胞内への取り込みを阻害するとIL-10産生量が減少した。
【考察】
本研究から、OLL2712株によるIL-10産生にはMincleとTLR2の協調的な働きが重要であることが明らかになりました。また、これらの認識の順序や細胞内局在も含めた免疫反応全体がIL-10産生に影響を及ぼす可能性が示されました。今までの研究によりOLL2712株の糖・脂肪代謝改善効果が認められていますが、本研究結果がそのメカニズムの一端となっていると考えられます。
プレスリリースURL
https://kyodonewsprwire.jp/release/202507142112
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