FM 福岡 FUKUOKA

2026年10月10日放送
「40代男性が高校時代の先生へ宛てた手紙」

先生、お元気ですか。

高校を卒業して、もう30年近くになります。

先日、本棚を整理していて、懐かしい一冊の本を手に取りました。

先生が、あの頃の僕にくれた本です。

高校時代の僕は、何をやってもうまくいかず、周りの人間がみんな自分よりちゃんとして見えていました。

そんな時に先生から渡された本で、自分と同じように迷い、苛立っている主人公と出会いました。

「こんなふうに感じているのは、自分だけじゃないんだ」と、少しだけ心が軽くなったものです。

今なら、分かります。

まだ20代だった先生は、僕の気持ちに気づいてくれていたんだと。

読み終えて返そうとすると、先生は笑って、「君にあげるよ」と言ってくれましたね。

サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」。

今、あの本は高校生になった息子の机の上にあります。

やっぱり親子ですね。息子はあの頃の僕と、どこか似ています。

息子は、ページをめくりながら、何を思い、何を感じるでしょう。

大人になって改めて読み返してみると、あの頃とはまた違ったものが見えてくるから不思議です。

この本は、これからもずっと僕たち親子のそばにあると思います。

先生があの時僕にくれたのは、一冊の本だけではなかったんですね。