2018年1月アーカイブ

受験と雪の季節が重なるこの時季、試験当日の悪天候は、受験生には大きな試練ですが、8年前の2010年1月、その試練と闘ったのが埼玉県の女子中学生でした。

石川県輪島市の日本航空高等学校石川を受験するために、母親とともに夜行列車に乗っていたところ、大雪で電車が新潟の長岡駅でストップするのです。
試験前日から当日に変わろうとする深夜のことでした。

学校まで300km。このままでは間に合わない!二人はヒッチハイクを決行。
1台目の車で上越市まで移動すると、吹雪の中を2時間歩き、ようやくトラックの運転手に頼み込み乗せてもらいます。

実は「金沢までなら」という約束でしたが、その手前の富山から方向を変え輪島へと向かってくれて、夜通し走り続けて学校に到着したのは試験の10分前。
驚く教職員に運転手は「うちの娘も受験生だから」と名乗らずに立ち去ったといいます。

試験で出題された作文のテーマは「私が感動したこと」。
女子生徒は、見ず知らずの親子を送り届けてくれた運転手の温かさ、絶対にあきらめないと懸命に車を探してくれた母親について「人の優しさに触れることが出来て感動、感謝」と綴ったのです。

後日、女子生徒のもとに届いたのは...合格通知でした。

フランスの国民的な詩人・小説家でノーベル賞作家でもあるアナトール・フランス。
彼の元には、時おり無名の若い詩人による自費出版の詩集が売り込みのために送りつけられていました。
フランスにしてみれば、そんなものにいちいち目を通している時間はありません。

ある日、若い詩人がフランスを訪ねてきました。
「先生、僕の詩集を読んでくれましたか?」
フランスは目を輝かせて答えます。
「もちろん! よかったよ。とくに24ページの詩が一番素晴らしかった」
若い詩人はフランスに礼を言って喜び勇んで帰っていきました。

そのやりとりを聞いていたフランスのマネージャーがフランスを咎めます。
「先生、嘘を言っちゃいけません。先生はあの若者の詩集を読んでないではありませんか」
するとフランスは微笑みを浮かべながらこう言い返しました。
「私はあの若者を励ましてやりたかっただけなんだ。
24ページにはもしかすると本当に素晴らしい詩があったかもしれないよ」

やさしい人間味の溢れた作品を書いたアナトール・フランスらしいエピソードですが、その一方、彼はこんな名言を残しています。
「自分の大切な本を人に貸してはならない。貸せばまず戻ってこないからだ。
現に私の書斎にいま残っている本といったら、そうやって人から借りたものばかりなんだから」。

2018年1月13日「道後温泉物語」

愛媛の道後温泉は日本書紀にもその名が出てくる日本最古の温泉です。
しかし明治初期の道後温泉は農村の寂しい荒れ果てた湯治場でした。

そこで歴史的な温泉を再興しようと決心したのが、町の初代町長となった伊佐庭如矢。
観光で町興しをする発想が全くなかった時代に「百年経っても真似のできない建物を作って、百年後も人が集まる町にしたい」と、現在の金額で27億円をかけることにしたのです。
この金額は町の総予算の5、6年分。「町を潰す気か!」と猛烈な反対運動が起き、伊佐庭は命の危険にも晒されました。

しかし町民一人一人に「人が集まれば町は潤い、百姓や職人の暮らしも良くなる」と誠心誠意で説得。
明治27年に完成したのが、重厚で風格のある城郭式木造3階建ての道後温泉本館です。
さらに伊佐庭は、松山駅から道後温泉までの3キロの道に鉄道を敷設。
たちまち道後温泉は全国にその名を知られる温泉地となったのでした。

日本初の観光による町興しの成功モデルといわれる道後温泉。
町のシンボルとなった本館は国の重要文化財に指定され、温泉地としてミシュランガイドの2つ星に選定されています。

伊佐庭がかつて宣言した「百年経っても真似のできないものを作って、百年後も人が集まる町」は、百年以上経ったいまも彼が思い描いた町のままなのです。

2018年1月6日「39光年彼方の異星人」

NASA:アメリカ航空宇宙局は2009年にケプラー宇宙望遠鏡を打ち上げました。
目的は太陽系外で地球型の惑星を探査するため。
地球以外に知的生命体が存在する可能性を探るための望遠鏡で、その観測範囲は数千光年彼方まで及びます。

それから8年後の去年2月。
NASAはケプラー望遠鏡が約39光年の距離に太陽に近い「トラピスト1」と名付けた恒星があり、その星を回る3つの惑星が地球型の生命体が存在できる領域に位置していることを発表しました。
その発表データから想像されることは、地球人と同じような、いやもっと高度な文明を持った知的生命体が存在する可能性が否定できないということ。
異星人との出会いの夢が大きく膨らんだのです。
今年、NASAは次世代の太陽系外惑星探査衛星「TESS」を打ち上げる予定。
その3つの惑星の様子がもっと詳しく解明されることになるのです。

ところで、NASAはかつて太陽系外の知的生物探索計画を潰されそうになったことがありました。
NASAが国家予算を使うことに反対する上院議員たちが「我が太陽系以外に知的生命が存在する徴候はかけらもない」として予算の打ち切りを進めたのです。

その発言に対してNASAはすかさずこうやり返しました。
「1492年、つまりコロンブスの航海まで我がアメリカが存在する兆候はかけらもなかったですよ」

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