2019年12月アーカイブ

2019年12月28日「ヒーローラット」

来年の干支は ねずみ。
現代社会では厄介者というイメージが強いネズミですが、地雷で苦しむ国々では、優れた嗅覚を活かして火薬を嗅ぎ分ける訓練を受けた「アフリカオニネズミ」が地雷の発見と除去に大活躍しています。
ネズミは体重が軽いことから地雷に乗っても爆発する心配が少なく、これまで一匹の犠牲も出すことなく活躍を続け「ヒーローラット」と呼ばれているのです。

ネズミの活用を思いついたのはベルギー人の工業デザイナー、バート・ウェットジェンスさん。
残留する地雷がもたらす深刻な問題を知り、ネズミの嗅覚や学習能力を活かせないかと考えたのがきっかけでした。
またそれは発展途上国が自力で取り組めるコストの掛からない方法でもありました。

しかし理解者も少なく資金集めに苦労する中、ようやくベルギー政府の研究開発助成金を得て非営利団体APOPOをスタート。
アフリカのタンザニアを拠点にネズミの訓練や地雷の探査に取り組み、今では各地で地雷や爆弾などの除去に多大な成果を挙げる国際事業へと発展したのです。

ネズミと人間がワンチームになって誕生させた「ヒーローラット」は発展途上国を悩ませる結核菌の検出にも活躍。
厄介者を役立つものへと替えた、人の知恵と思いは未来へと続いています。

2019年12月21日「奇跡のクリスマス休戦」

1914年12月24日。この年、ヨーロッパでは第1次世界大戦が始まり、西部戦線ではドイツ軍とイギリス軍が塹壕を掘って向き合い、寒さと疲労に耐えながら戦っていました。
でもこの日の夜は銃撃の音が響くことは無く、ドイツ側の塹壕から『きよしこの夜』の歌声が聞こえてきたのです。
それを聞いたイギリス兵も『きよしこの夜』を歌い返しました。
そして夜が明けると、どちらともなく両軍の兵士たちが丸腰で塹壕の外に出て歩み寄り、手を握り合ったのです。

自然に始まったクリスマス休戦。
彼らは両軍の戦死者の遺体を運び、合同で埋葬式を行いました。
互いの煙草を交換して火をつけ合う両軍の兵士。
やがて酒を酌み交わしたり肩を組んで記念写真を撮ったり、あり合わせの材料でクリスマスツリーを飾ったり。
ボールの代わりに土嚢や空き缶で、サッカーの親睦試合も行なわれました。

しかしこれを知った両軍の司令部、つまり戦場の現場にいない上層部は「このような非公式の休戦は認めない」とし、その部隊を厳しく処分します。
その後戦争は4年続き、二度と奇跡は起こりませんでした。

戦場で生まれた奇跡のクリスマス休戦。
このときのことを兵士の一人が日記にこう記しています。
「戦争というものがばかばかしく思えてきた。一刻も早く終わらせなくてはならない」

2019年12月14日「教授はベビーシッター」

大学で社会人入試が実施されるようになった現代、子育てをしながら学ぶ人も珍しくありません。
米国テキサス州に住む学生ケイティさんもその1人。
海軍で下士官として14年務めた後、理学療養士になるために大学に通いました。

2016年のある日のこと、まだ幼い娘をベビーシッターに頼んで大学に行こうとしていたところに、そのベビーシッターから急病で来られないとの連絡がきます。
単位を取得するためにはどうしてもその日の講義を受けなければならない。
そこで彼女は娘とともに大学に行き、子連れで講義に出ました。
でも教室に入った途端、娘はむずかって大声で泣き出したのです。
このままでは講義の邪魔になるため、ケイティさんはあきらめて教室を出ようとしました。

ところが、その様子を教壇から見ていた教授が彼女の席にやって来て赤ちゃんを抱き上げ、また教壇に戻り、そのまま片腕で赤ちゃんを抱えたまま講義を始めたのです。
そして不思議なことに、赤ちゃんも講義が始まった途端、ぴたりと泣き止んで、講義に聴き入っているかのように静かにしていたのでした。

じつはケイティさんは娘を生む前、妊娠しているときからこの教授の講義を受けています。
彼女のお腹にいるときから、赤ちゃんは教授の声を子守唄として聴いていたのかもしれません。

2019年12月7日「毎日生まれ変わる」

明日12月8日はジョン・レノンの命日。
彼がこの世を去って39年になりますが、今年も世界中のラジオから彼を偲ぶ『イマジン』が流れることでしょう。

ジョンは晩年、毎年のように家族で日本を訪れて軽井沢でのんびり過ごしていました。
そして熱心に日本語を学んでいたことが伺えます。
彼の遺品の中に日本語練習帳として使ったスケッチブックが残されています。
ページの片側にはローマ字で書いた日本の単語や言い回し。
そしてもう片側にはその言葉から連想されるイメージを描いた手描きのイラストです。

たとえば「難しい」という言葉には、道路で逆立ちして歩く男性のイラスト。
そこに「手で歩くのは難しいです」というローマ字が添えられています。
「生きる」という言葉には、摘み取った花を愛でている男性のイラスト。
「わび」「さび」という言葉もあります。
「わび」には男性が寂しそうな一本道を犬と歩いているイラスト。
「さび」には同じ男性がうなだれて座り、少し離れた木の陰で犬が座っているイラスト。

そして「生まれ変わる」という言葉。
そのイラストにはベッドで眠る男女が描かれ、ローマ字で「毎日生まれ変わります」という言葉が添えられています。

ジョン・レノンは生前、"毎日生まれ変わる..."そんな生き方をしていたのです。

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