FM 福岡 FUKUOKA

2023年9月のテーマ 松茸 ①

ふくおか グルメ手帖。
この番組では、毎月様々な食材を因数分解。
雑学からプロに聞く扱い方、簡単レシピを紹介していきます。
今月の食材は、「松茸」です。



松茸は、縄文時代にはすでに食べられていたと言われています。
というのも、東北地方の遺跡で大量に発掘された「きのこ型土製品」は、食べられるきのこを示した立体図鑑ではないかとも言われていて、その中に松茸に似たものもあるのです。
そして、奈良時代になると、日本書紀、万葉集でも書かれるようになりますが、この頃は、今と同じようにあまり手に入らない珍味でした。
それが江戸時代になり、山林の整備が進むと比較的手に入れやすくなります。

実は明治くらいまでは、椎茸よりも安かったって、信じられますか?
当時、お米が10キロ1円10銭くらいだった時に、椎茸が1キロ1円30銭、松茸は15銭くらいでした。まだ椎茸の栽培技術が確立してないとはいえ、激安ですよね。それだけ日本各地で松茸が採れていたということです。
例えば、福岡で言えば、香椎は昔、松茸の産地として有名でした。
嘉仁親王が行啓された折り、香椎宮で松茸狩りを楽しんだ記録が残っています。
だから今でも、香椎宮の不老水は、毎年正月になると、綾杉の葉、松茸とともに皇室に献上されるんですね。



生産量の記録が残っているものですと、1941年には12,000トンも収穫されています。
ところが、2005年には34トンとなり、現在ではさらに減少しています。
これだけ収穫量が減ってしまったのは、一説には日本人の生活が近代化されたからだと言われています。
松茸は非常にデリケートなので、他のきのこに邪魔されずに、しかも日当たりなどの条件が整わないと生えてきません。昔は山で薪拾いなどをして、自然と山林が整備されていたのですが、人々が山に入らなくなり、松茸が育ちにくくなったのです。

それでも食べたい松茸ですが、日本人以外はあまり好みません。
松茸の学名は「臭いキノコ」という意味になり、外国の方には不快な香りのようです。
それでも、近年は少しずつ松茸の良さを知り、海外でも人気が出てきています。

さて、松茸狩りなんてできる機会もありませんが、どういった場所に生えているかというと、樹齢30年以上の赤松の周辺です。そして、椎茸などとは違い、その生きた赤松の根から栄養をもらうので、白い菌糸の輪っかのようなものができます。これを「シロ」と言い、シロを見つけるとその周りには松茸があるというわけです。でも、このシロ自体も見つけるのは名人級です。

高級食材ですけど秋の味覚の王様である松茸。
たまには贅沢して、味わってみてください。