FM 福岡 FUKUOKA

2023年12月のテーマ 鰤 ①

ふくおか グルメ手帖。
この番組では、毎月様々な食材を因数分解。
雑学からプロに聞く扱い方、簡単レシピを紹介していきます。
今月の食材は、「鰤」です。

鰤は日本で古くから親しまれてきた魚で、室町時代の文献にも「はまち」として登場します。そして、大きさによって呼び名が変わる「出世魚」としても有名ですが、それ以外に各地域で呼び名があって、その数100種類以上にもなります。その一因は、成長の早さ。鰤は7、8年生きる魚ですが、30cmくらいから1mくらいまでグングン成長していき、日本沿岸様々な場所で獲れます。そして、小さい時と大きくなってからでは味も違うので同じ魚とは思われず、その地方独特の呼び名も付けられ、それがのちに同じ魚だと分かってくるのですが、名前だけが残り、出世魚となったのです。

さて、日本一有名な鰤は、富山県の「氷見の鰤」ではないでしょうか。北陸地方特有の「ブリ起こし」と呼ばれる地響きがするような雷が鳴る季節、富山湾の定置網に入り、氷見漁港で競られた鰤のことで、冷蔵庫のない昔は、これを「塩鰤」にして、飛騨や信濃などへ送っていました。そして、正月には、この塩鰤が入った雑煮を食べていたということで、何だか博多と似ていますね。
もう1か所、鰤で重要な場所が香川県です。日本で初めてハマチの養殖に成功し、「ひけた鰤」「なおしまハマチ」「オリーブハマチ」のハマチ三兄弟をブランド化しています。ここから始まった鰤の養殖は全国へと広がり、今や四国と九州は鰤の養殖の一大産地となっていて、日本での生産の半数以上を占めます。ちなみに、世界の鰤の養殖の8割は日本ということで、どれだけ日本人が鰤を好きかが分かりますね。



ところで鰤は、マグロなどと同じで回遊魚の一種です。回遊魚は泳ぎ続けることでエラに海水を送り、そこから酸素を取り込むので、広い場所が必要となり、あまり養殖には向きません。ところが鰤は口を金魚のようにパクパク動かしてエラに海水を送ることができる器用な魚なので、養殖場のような網に囲まれた狭い場所でも育てることが可能なんですね。

さあ皆さんは、鰤は赤身だと思いますか、白身だと思いますか。正解は、赤身です。
たくさんの酸素が必要な回遊魚は、酸素を溜め込む性質があるミオグロビンを筋肉の中に多く持っています。このミオグロビンが赤色をしているので、赤身になるのです。
ただ、マグロやカツオのように外洋を回遊しているのではなく、比較的沿岸に近い海を回遊しているため、運動量が少なく、赤い色も少ないというわけです。

最後に、鰤を使った料理で皆さんが一番に思い浮かべるのは「鰤大根」ではないでしょうか?この料理、実は絶妙でして、鰤は回遊魚だから白身よりも脂肪が多く、他の食材に旨味が移りやすく、回遊魚なのにあまり運動しないため、熱すると固くなる筋形質タンパク質が少なく、煮込んでも固くならずに美味しく食べられるという、鰤ならではの特徴を活かした料理なんです。寒い冬に「鰤大根」。いいですよね。
私は年越しまで待てそうにありません。
皆さんも今夜は鰤をいかがですか?