2025年11月のテーマ ふぐ ①
ふくおか グルメ手帖。
この番組では、毎月様々な食材を因数分解。
雑学からプロに聞く扱い方、簡単レシピを紹介していきます。
今月の食材は、「ふぐ」です。
ふぐは、岸近くでも獲れるので、古くから食べられてきました。縄文時代の貝塚からも、ふぐの骨が発掘されています。ただ、皆さんご存じのように毒を持っているので、多くの方のあくなき探求心の賜物で、今日では安全に食べられるようになりました。
その毒には治療薬がないため「当たると死ぬ」ということから、関西では鉄砲とも言われ、「鉄砲の刺身」なので「てっさ」、「鉄砲のちり鍋」なので、「てっちり」と言われています。
また、テトロドトキシンをたっぷり含んだふぐの卵巣を何とかして食べようと果敢にも挑んだのは、江戸時代の加賀藩。3年間糠漬けすることで、毒がすっかり抜けて美味しく頂けるようになるという、現在でも根拠が不明な方法でできたのが、「ふぐの子」とか「ふぐのへしこ」と言われるもので、「奇跡の発酵食品」とも呼ばれています。
日本人の食べ物に関する貧欲さには、本当に感心します。
さて、ふぐと言えば、真っ先に思い浮かぶ場所は、下関です。
これには、歴史的な背景があります。
まず、下関は、玄界灘、瀬戸内海、関門海峡に面しているため、ふぐがよく獲れていたことが前提となります。江戸時代には幕府から禁止されていたのですが、よく獲れていたのをいいことに庶民はこっそり食べていて、毒を取り除く知識と技術が備わっていったんですね。明治時代に入っても禁止は続いていたのですが、明治政府の初代総理大臣、伊藤博文が下関に滞在した際に、時化で他の魚が出せないということで、黙ってふぐを出したところ、大絶賛。なんと、山口県だけ、ふぐを食べてもいいことになったんです。
その後、徐々に各地で解禁されていきますが、なんと言ってもふぐ解禁1号である下関が先駆者としてその栄誉にあずかっているということなんですね。
ふぐは身の美味しさはもちろんのこと、他にも美味しい部分がありますよね。
まず、食べられるふぐの皮は、3種類に分けられます。ちょっと茹でて白くなって出てくるのが、一番身に近い部分の薄皮で「身皮」といいます。
その上にあるプルプルした皮が「とうとう身」と言います。これは、身皮に近い部分なので、地名の三河とかけて、その隣の現在で言う静岡県にあたる「遠江(とうとうみ)」から名付けられました。一種のダジャレですね。そして、一番外側にあるのが、ブツブツがあるので「サメ皮」と言われています。このブツブツを包丁で引いて取り除いたものは、コリコリしててお酒のつまみにぴったり。でも、ふぐなのにサメって面白いですよね。
お酒と言えば、ふぐのひれ酒もたまりません。
昔、まずい安酒に焼いた魚のヒレを入れて飲んだところ、とても美味しくなったという偶然から生まれたこの飲み方。色々の魚のヒレを試した結果、ふぐが一番になったようです。
皆さん、寒いこの時期、ふぐ鍋にひれ酒は、いかがですか?