FM 福岡 FUKUOKA

2025年12月のテーマ ぶり ③

この番組では、毎月様々な食材を因数分解。
雑学からプロに聞く扱い方、簡単レシピを紹介していきます。
今月の食材は、「鰤」です。


中村調理製菓専門学校 日本料理担当 島村公大先生にお伺いしました。

中村調理製菓専門学校

福岡市中央区平尾2-1-21

092-523-0411


https://chori.nakamura-s.ac.jp/

◆鰤の栄養について
鰤は、冬に脂がのって美味しくなる代表的な魚で、栄養価もとても高い魚です。良質なたんぱく質に加え、DHAやEPAが豊富で血液をサラサラにし、脳の働きを助けます。さらにビタミンDは骨を強くし、ビタミンB群や鉄、亜鉛は疲労回復や免疫力維持に役立ちます。

◆鰤は、昔、保存食としてもとても重宝されていました
鰤の塩漬けは、冷蔵技術がなかった時代に行われた代表的な保存法です。冬に水揚げされた脂ののった鰤を塩で漬け込み、水分を抜いて腐敗を防ぎました。特に北陸地方や日本海側では「塩ぶり」が年越しのごちそうとして作られ、正月料理や贈答にも用いられました。塩蔵によって旨味が凝縮し、保存が利くため、冬の保存食として親しまれています。また、博多雑煮にもこの塩ぶりが使われ、祝いの味として今も受け継がれています。

◆鰤を美味しく頂くポイント
鰤の魅力は鰤特有の風味と脂の多さかと思います。ただ鮮度が落ちるとそれらの魅力が生臭い、脂っぽいとネガティブに捉えられます。鰤を調理するときは、まずは鮮度の良い鰤を選びます。鰤の切り身は血合いの部分が黒く変色しやすいので、刺身や切り身を選ぶときは注意してみてください。
 鰤は定番の料理には「照り焼き」や「荒炊き」、「鰤大根」など醤油や砂糖の甘みを利かせた料理が多いと思いますが、生臭みを抑えるためにしっかりと濃い目の味をつけることを心がけると良いかと思います。塩焼きにする時もしっかりと多めの塩を振ることをお勧めします。薄味より濃い目の味が鰤にはよく合います。

◆先生だから知っている鰤の豆知識など
博多には「嫁ぶり」という鰤にまつわる古い風習があります。嫁入りの際、嫁の実家から嫁ぎ先へ塩ぶりを贈り、「家が繁盛し、良縁が続くように」という願いが込められています。鰤は成長とともに名前が変わる出世魚で、家の繁栄の象徴とされました。冬にとれた脂ののった鰤を塩漬けにして保存し、正月の祝い膳や雑煮に使う文化と結びついたもので、現在でも一部地域で祝いの象徴として受け継がれています。